横島剛の制作と展示の軌跡を記録する公式サイトです。
言葉が生まれる前の場所
永遠に有効な制度も、不変の価値も、存在しない。世界は止むことなく姿を変え続け、固定された実体などないことを、私たちに突きつける。それでも私たちは「正解」や「意味」を求めずにいられない。おそらく、この世界の圧倒的な「根拠のなさ」に、心が耐えられないから。
言葉という「型」は、未分化で生々しい体験を、理解可能なものへと変換する。しかし同時に言葉は、世界の謎をすでに「知っているもの」へとすり替え、「未知なるもの」をそのまま受け取る体験を、静かに奪っていく。はじめて「羽ばたく生命体」を見た子供は、その色と動きに圧倒される。「あれは蝶だ」と教わった後、畏敬の念は消えていく。
私にとって絵画は、固定された意味がほどけ、別の可能性が生まれては消える、変容の痕跡だ。言葉とは異なり、絵画は「なんだかわからないもの」をそのままの姿で差し出す。言葉が生まれる前の場所——そこでは自分と世界の境界が侵食し、溶け合い、互いに流れ込む。
横島 剛 Takeshi Yokoshima
上昇する青紫の柱
2026
パネルに水張りしたケント紙の上に透明なアクリルメディウムを塗布し、つるつるの真っ白な下地を作った上に、アクリルメディウムと合わせたインクを塗布し、一気に画面を生成しました。画面の向こう側から光がさすように下地の白さを活かしながら、各々の色が有機的に意思を持って生成することを願って制作したものです。
ターコイズからオレンジへの遷移
2026
2026年4月、ギャラリイKにおける個展「言葉が生まれる前の場所」で展示した作品です。水張りした紙に透明なアクリルメディウムを塗布し、抵抗感の少ない艶やかな画面を作ります。下地の紙の白さをできるだけ生かしながら、アクリル絵の具とインクをメディウムで溶いて一気に画面を生成しました。各々の色が有機的に、意思を持って自然に生成することを願って制作したものです。
ターコイズから青紫への遷移
2026
2026年の個展「言葉が生まれる前の場所」のポストカードに使用した作品であり、2026年初頭に新しい視界が開くきっかけとなった一点です。水張りしたパネルにアクリルメディウムで白く滑らかな下地を作り、アクリル絵の具で第一層を描きます。絵具のテクスチャを残しながら第二層、第三層と重ね、最後にアクリルメディウムで溶いたインクを加えることで、複数のレイヤーの重なりを持つ画面を生成しました。植物または魚介類の化石を思わせる浅浮彫のようなテクスチャは、意図したものではなく制作過程で自然に生まれたものです。
ブルーから赤への遷移
2026
2026年の個展「言葉が生まれる前の場所」での展示作品です。アクリルメディウムを刷毛で均質に塗った白く滑らかな下地の上に、丸めた新聞紙のストロークや、生乾きの画面への紙の圧着と剥離を繰り返すことで偶然性を生かした第一層を生成します。その上から、青と赤のインクをアクリルメディウムで溶いて左右に刷毛で載せ、画面中央で二色が相互に混ざり合う第二層を形成しました。近づいて見ると、甲冑類の皮膚を思わせる有機的な第一層のマチエールが透けて見えます。
橙から青緑への遷移
2026
2026年の個展「言葉が生まれる前の場所」での展示作品です。チューブから直接アクリル絵の具を画面に載せ、シリコン製のナイフで下地の図像を作ります。その上からオレンジ、ブラウン、グリーン系のインクをアクリルメディウムで溶いて塗布し、図像を塗膜の中に閉じ込めました。それでも塗膜の下から絵具の立体的なマチエールが有機的な動きを主張します。深い海の底の静寂のなかで、体が溶け出して海水と一体になるような感覚を抱きながら制作した作品です。
ターコイズからオレンジへの遷移 II
2026
2026年のギャラリイKにおける個展「言葉が生まれる前の場所」での展示作品です。ケント紙を水張りしたパネルに透明なアクリルメディウムで滑らかな下地を作り、左にターコイズ、右にオレンジのグラデーションを第一層として形成します。乾く前に丸めた新聞紙で大きなストロークを加え、完全に乾いた後、インクとメディウムを水玉状に落として生物の卵を思わせる有機的な形を生成します。さらに卵状の図像が乾く前に紙で圧力を加え、形を崩していきました。恣意性をできるだけ排し、画面上で形が生まれ、壊れていく過程を後方から支援するような立場で制作したものです。